ビリギャルよりビリから慶應を通信で卒業しました!-卒業までの勉強法書いていきます-

高校中退から高卒認定試験を受けて、慶應義塾大学の通信教育課程を卒業しました。 卒業まで5年間において自分が得た、経験や知識をブログに示していきたいと思います。

インドの教育⑺無認可学校

こんにちは。
今回は、インドの教育最終回です。
インドの無認可学校の存在について書いていきます。
インドには就学人口が約2億人います。日本の総人口の1.5倍以上の人が学校を必要としています。
そのような巨大な規模の学校教育を影で支えているのが、インドの無認可学校と言われます。
インドでは、100年程前から教育の普遍化に向けて各種の取り組みがおこなわれてきました。形の上では一定の成果があらわれている部分もありますが、表に見えにくい問題も残っています。例えば、多くの公立学校が機能不全に陥っているという問題があり、そのような公立学校の代替として無認可の低額私立学校を選択する人が拡大しています。
そのような無認可学校の役割から、インドの教育問題や今後について考えてみたいと思います。

⑺インドの無認可学校

無認可学校とは

インドでは、古くから教育の普遍化に向けた取り組みがありました。
1990年代の教育政策によって、児童の就学率や出席率が急上昇しました。
就学率に関しては100%を達成して、形式上は教育の普及に成功したと言えます。
しかし、実際には、急激な就学人口増加に対応できず多くの公立学校が機能不全に陥っています。
そのような公立学校の事情から、一部の貧困層の中では、低額の無認可私立学校(LFP学校)が公立に変わる選択肢として拡大しています。
LFP学校には、イングリッシュ・ミディアム・パブリックスクールを模倣している学校もあります。イングリッシュ・ミディアム・パブリックスクールとは富裕層や中間層の子どもを対象に英語で教育をおこなう私立学校のことです。無認可の私立学校は正規学校の5分の1から10分の1の低いコストで運営されています。
そのような無認可学校を選択する層は、就学困難な貧困層ではなく、より高い教育を求める貧困層であるという特徴があります。
貧困層の保護者の中には、少しでも高度な教育を子どもに受けさせたいう強い願いを持っている人がいます。そのような階層を中心に、英語などで高等な教育をおこなう無認可の低額私立学校が支持されるようになりました。4

ここでいう無認可学校とは、正規の学校と同じ形態で運営されているが、学校教育法規に適合していない学校のことをいいます。
宗教学校やオルタナティブ教育の学校などは含めません。
無認可学校の中には、認可されている学校と無認可学校両方を経営している私立学校もあります。両者が連携して運営されている部分もあるようです。
初等中等教育段階まで無認可学校は存在します。インドの学校全体の1割程度は無認可学校という報告もあり、貧困地域など場所によっては8割くらいが無認可学校の地域も存在するようです。

無認可学校には、無認可な故のメリットも存在します。
例えば、4月1日の年度始まりなどに限らず、いつでも入学できるという点です。認可学校では一年に一回の入学時期を逃すと、入学手続きをおこなうことができず、1年遅れの就学になってしまうこともあります。しかし無認可学校ではそういう縛りがありません。
このように無認可学校は、インドの教育制度の中で無認可学校なりの役割を歴史的に果たしてきました。
しかし、政府はそのような無認可学校の存在を知りつつも放任してきました。

インドの教育制度まとめ29

無認可学校の存在

インドでは1917年に義務教育法が制定され、初等教育の普遍化が目指されました。
しかし、100年以上経った現在もその目的は達成されていない部分があります。政府の財政難や学校統制の不徹底、国民の貧困などがその原因と考えられています。
義務教育に関する最近の動向では、2010年に無償義務教育の法整備がなされて、目標達成に向かって進んでいます。
しかし、そのような政策が、かえって、学校教育の階層化をすすめている部分もあるようです。
中心都市デリーなどでは公立学校の信頼回復を目指し、州立学校が入学試験を設けたり、英語での教育をおこなったりして、私立学校を意識した学校改革がおこなわれました。
その結果、富裕層が通うイングリッシュ・ミディアム・パブリック・スクールを頂点として、それを模した州立学校が続き、その下にMCD(デリー自治体)学校という低層レベルの学校という階層化ができました。
それとは別の公教育の枠外にある無認可LFP学校については、影の制度ようなものができあがっていきました。
インドの学校教育の中で、無認可学校は非公式な規則や手続きの中で形づくられていきました。

無認可学校は教育制度の枠外でその役割を果たしていましたが、2005年頃から無認可学校の法的正当性が問題視されるようになりました。
子どもの権利保障に取り組むNGO「ソーシャル・ジュリスト」が、条件を満たさない無認可学校の閉鎖を要求する訴訟を起こしたのです。
ソーシャルジュリストは、学校の正規化こそが教育の質を保証すると考えて無認可学校を否定していました。
これに対して、デリー私立学校協会などは公立学校の機能不全を理由に、無認可学校を擁護しました。
このような事態が発生したことによって、無認可学校について無関心だった政府も徐々にその存在を認めざるをえなくなってきました。

無認可学校を選択する理由

無認可学校は、貧困層の中にある、より高い教育を享受したいという欲求に対する役割を果たしています。しかし、教員の資格や待遇、経営者の営利目的による不正運営などの問題点も存在します。
そのような問題点も存在する無認可学校を、あえて選択する保護者の理由はさまざまですが、一番の理由は英語で授業がおこなわれることのようです。
保護者たちは、教育が何らかのチャンスを掴むために重要であると思っています。そのための英語の重要性も認識しています。そのような気持ちから、英語で授業がおこなわれ、教員が一人一人に注意を払ってくれる無認可学校を選択するのです。
インドの、今の保護者世代は、公立学校の機能不全などで、まともな教育を受けることができなかった人もいます。自分たちが達成できない成功を子どもに期待して、無認可学校へ子どもを通わせるような場合があるみたいです。
しかし、学校に関する知識や情報が欠如している場合もあり、時には学校に搾取されるような実情もあります。

無認可学校の今後

2010年の施行された「無償義務教育に関する子どもの権利法」によって、公教育における影の制度のもと存在した無認可学校が法的正当性を完全に喪失することになりました。
国の規定を満たさない無認可学校は存続できないですが、デリーでは私立学校協会などが学校の正規化要件の緩和などを政府に要求して無認可学校の存続を目指しています。
このような動きによって、正規の学校として存続している無認可学校もあれば、すでに廃校になった無認可学校もあるようです。
インドでは1917年より教育の普遍化を目指し、就学率は向上していきました。しかし、政府が学校統制を徹底せずにいたため、公立学校が機能不全に陥り、学習喪失世代が生まれました。私立学校には富裕層しか行けないので、貧困層の学習要求を満たすために無認可学校が拡大していきました。しかし、2010年に無償義務教育の法整備が進み、無認可学校の法的正当性消滅しました。無認可学校によって教育を充足させていた貧困層が今後どのような形で教育を享受できるのか注目されています。

以上がインドの教育でした。
ノーベル賞を受賞したインドの経済学者アマルティア・センは、「邑(むら)に不学の戸(こ)なく、家に不学の人なからしめん事を期す」とした明治時代の日本の政策を引用し、教育に重点を置いた政策が日本に大きな経済成長をもたらしたと主張して、インドでも教育の重要性を訴えました。
インドの教育は紆余曲折しながらも、就学率向上、教育の普遍化を目指し成長してきました。
13億の人口を抱え、義務教育の歴史もまだ浅いので、高い教育水準の環境を国内すべてに行き渡らせるには時間がかかりそうですが、オンライン教育など最先端のテクノロジーなどを利用しつつ確実に前に進みつつあると感じました。

(参考文献)
小原優貴『インドの無認可学校研究』