ビリギャルよりビリから慶應を通信で卒業しました!-卒業までの勉強法書いていきます-

高校中退から高卒認定試験を受けて、慶應義塾大学の通信教育課程を卒業しました。 卒業まで5年間において自分が得た、経験や知識をブログに示していきたいと思います。

フィンランドの教育⑷PISAとはどのような存在か

こんにちは。
今回は、フィンランドの教育第4回目です。
フィンランドがかつて上位を独占した、世界の学力調査であるPISAに焦点を当てて、書いていきたいと思います。

⑷PISAとはどのような存在か

1 PISAとは

PISA調査とはOECD(経済協力開発機構)が実施する国際学力テストです。
2000年から、3年ごとに実施されている学習到達度調査で、最新の2018年調査では世界80以上の国・地域が参加しています。
対象年齢は15歳で読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について実施されます。
調査では、学校での知識理解度ではなく、学んだ知識や技能を、実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活用できるかが評価されます。
例えば、図表・グラフ・地図などを含む文章を読んで、そこから課題をみつけて、答えを出すための方法や考え方を論理的に説明するような問題があります。
また「自由記述形式」の出題が多いのも特徴です。
例えば、暑い日のランニングについて、データをみて、気温の上昇が汗の量に与える影響について説明するといった問題(2015年)です。

また、読解力を測る問題では、携帯電話の安全性についてといったテーマで、相反する意見を述べた問題文を読み、それに対する自分の「意見を表現する」ことが求められています。(2009年)

2015年より出題形式が、筆記型からコンピュータ使用型調査に変わりました。
日常生活の中でICT(情報通信技術)が欠かせない現代社会で、その活用力をみるためです。

このようにPISAではその時代において、実際の生活にどの程度、知識や技術を活用できるかといったことを焦点にして調査がおこなわれています。

2 各国の成績、反応

3年ごとにおこなわれるPISAの調査は、毎回調査報告が公表されます。
2000年の初開催から、回数を重ねるごとに参加国は増えています。
以下は2015年の結果です。

・2015年調査結果
世界72の国・地域が参加。
OECD加盟国・地域が35、非加盟国・地域が37。
全参加国の平均が500。

【数学的リテラシー】
1.シンガポール 564
2.香港 548
3.マカオ 544
4.台湾 542
5.日本 532
6. 北京,上海,江蘇,広東 531
7.韓国 524
8.スイス 521
9.エストニア 520
10. カナダ 516

【読解力】
1. シンガポール 535
2.香港 527
3.カナダ 527
4.フィンランド 526
5.アイルランド 521
6.エストニア 519
7.韓国 517
8.日本 516
9.ノルウェー 513
10.ニュージーランド 509

【 科学的リテラシー】
1.シンガポール 556
2.日本 538
3.エストニア 534
4.台湾 532
5.フィンランド  531
6.マカオ 529
7.カナダ 528
8.香港 523
9.北京,上海,江蘇,広東 518
10.韓国 516
経済協力開発機構 - Wikipedia

フィンランドと日本を比較した勉強したデータはこちらになります。
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/e/educedia/20181212/20181212224154.png

フィンランドは安定して高水準を保っているようなイメージです。
日本は、読解力で順位を落としたりしますが、両国ともに総合的に、常に上位にいます。

2015年の調査では、日本からは198校、約6600人が参加しました。
科学的リテラシーは前回の4位から2位、数学的リテラシーも7位から5位に上昇しています。
前回4位だった読解力は8位に落ちました。
PISA結果は、発表されるたびにマスコミなどでも話題になります。
日本では、過去にPISAの順位が急降下した時に、ゆとり教育が槍玉に上がり、公教育に対する不信が募ったということもありました。
各国でも、そのようにPISAの結果の一喜一憂するのは同じのようです。

・シンガポール
2015年の結果では、全分野でシンガポールが1位でした。
しかし、シンガポールは現状に満足している様子ではなかったみたいです。
シンガポールの大手紙には「シンガポールはPISAでいい成績を残したかもしれないが、エストニア、フィンランド、カナダといった成績上位国からも学べることがあるはずだ」とさらなる教育システムの改革を訴えているという記事が掲載されていたようです。
好成績の要因には、小国であるといったアドバンテージもあるでしょうが、今後もシンガポールの躍進に期待ができそうです。

・フランス
現状を嘆いている国がフランスです。
フランスでは、さまざまな教育改革の試みがおこなわれていますが、結果が出ていません。

フランスの大手紙「フィガロ」では「OECD加盟国中“平均”と言っても、それは並以下だということに過ぎない。世界第5位の経済規模をほこるフランスは、ベトナムやマカオ、エストニアよりも下なのだ」として、行き過ぎた平等主義がかえって全体の学力を下げてしまったと批判しているようです。
「ル・モンド」では「フランスの教育制度は8%のエリートを育成しているが、それ以外の生徒は成績不振に苦しむことが多い。成績不振者はいくら改革を繰り返しても減少せず、最近は増加する傾向すらある。行き過ぎた平等主義、つまりどの生徒も同じように扱い、個々の才能や不得手なものを考慮に入れないことも問題だろう。さらにフランスは、教育の場でのITの活用でも遅れをとっている」
さらに「リベラシオン」は大々的に特集を組みました。自国より順位が高いドイツ、デンマーク、カナダに焦点を当て、フランスと異なる点をまとめています。
それによれば、ドイツでは「授業で生徒に積極的に発言をさせる」ことで自立した生徒が育つという。デンマークでは「特定の科目が重視されることはない」ため、どの分野を専門にしても下に見られることがない。そのため親と生徒と教師の間に強い信頼関係が存在しているのだ。カナダではその信頼関係がさらに強く、「彼らの間には家族的とすらいえる関係が存在する」という見解でした。

フランスでは、成績不振による「PISAショック」により行き過ぎた平等主義が批判の的になったようです。
日本のゆとり教育が責められた時と状況が似ていると思いました。

・ポーランドとデンマーク
日本では、脱ゆとりによって成績を回復することに成功しましたが、政策を変えればPISAの順位が上がる、というわけでもないみたいです。

英誌「エコノミスト」では「大事なのは、カネがすべてではないということだ。たしかに貧しい国では、生徒1人あたりの公的支出が増えるにつれ、テストの成績も上がっていく。だが、その額が一定を超えると相関関係は消える。ポーランドとデンマークの生徒の成績は科学において同水準だが、デンマークはポーランドより50%も多くのカネを生徒1人あたりに注ぎこんでいる。もしかすると、先進国では『子供を私立学校に行かせること』も、カネの無駄となる可能性があるのだ」と分析されています。

たしかに、どのようなことでも、ある一定の成績を超え、さらに高みにあがるには、上から与えられるもの以外の要素が必要な気がします。

・フィンランド
最後に、今回の記事の主役であるフィンランドについてみていきます。
上位の常連だったフィンランドは、数学で12位と順位を落としているようです。

米紙「ワシントン・ポスト」はフィンランド人教育学者にインタビューし、その要因を分析しました。
その結果、主な原因を3つあげています。
⑴「楽しみながら読書をする」男の子が減っていること。(フィンランドでは女子の方が高成績)
⑵インターネットを利用する時間が増え、子供の読書時間が減っていること。
⑶2008年以降の経済の低迷の影響で、補助教員が減るなど、教育予算が削減されたこと

しかし、フィンランドの教育界に、PISAの成績を上げるための制度改革をする気は無いようです。フィンランドの教育指針は「生徒の勉強時間を多くすること」ではなく「学校を楽しく面白い場所にすること」にあるからだそうです。
フィンランドの教育には、PISAに振り回されることのないしっかりとした方向性があると感じました。

どの国でも、PISAの結果には、注目しているようです。
しかし、それを目標とするのか、目的達成のための目安とするのか、つきあい方に違いがあると感じました。

(参考)
子供を高い私学に入れるのはカネの無駄? 「PISA」の結果を各国メディアはこう報じた | クーリエ・ジャポン

3 PISAをどう捉えるか

PISA調査は、開始から約20年になります。
世界標準の使える学力を測るという試みで、その結果は世界の教育に影響を与えてきました。

PISAでは、学校のカリキュラムに関係なく、学んだ知識や技能を、実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活用できるかが問われます。
現在多くの国が、カリキュラムに縛られず、考え方や理解力を調べようとするPISAのコンピテンシー(能力や特性)概念を導入しています。

しかしPISAの調査内容は年々変わっていきます。
2015年には「チームとして問題を解決する能力」、2018年には異なる視点から世界を見る能力「グローバル・コンピテンス」が調査の対象に含まれるようになりました。
日本は、この「グローバル・コンピテンス」の内容が不明確であることなどを理由に2018年のPISA調査に不参加でした。

OECDで教育を統括するアンドレアス・シュライヒャー氏は、PISAで測れるのは教育の一部で、学校では多くのことを浅く教えるが、生徒にとって本当に必要な能力を育てることにはつながらないので、個々の樹木だけでなく、森を見てもらおうという試みで、新たに、「エデュケーション2030」により、より広い枠組みを構築しようとしていると述べています。

2006年頃、PISAにおける日本の成績が下がった時、ゆとり教育が批判されました。
しかし、シュライヒャー氏は、日本が当時のテストで正解が複数ある問題に関する成績の伸びは、日本が一番であったことをあげて、知識で12ポイント下げるのと、創造力で4ポイント上がることの、どちらが重要か考えて欲しいといった指摘をしています。

・教える量と教育の結果は関係ない
2020年度から日本では新しい学習指導要領が始まり、教える内容が増えますが、指導要領の改訂は「エデュケーション2030」の概念の多くを体現していると思うとシュライヒャー氏は述べています。
しかし、PISAの結果では、教える量と、教育の結果の質の間に相関関係がないことを注意すべきだと指摘しています。

フィンランドは、日本の授業時間の約半分ですが、教育の成果は、ほぼ似ています。
学習内容を増やすことは誰にでもできるが、大切なのは教育課程の深さであり、難しいことは教える内容厳選することである、とシュライヒャー氏は述べています。

・PISAという一つの尺度に固執し過ぎない
PISAの参加国が増え注目されるにしたがい、影響力が高まり、必要な学力の基準が狭くなり、教育の多様性が失われるといった批判も出てきているようです。
また、PISAの普及に伴い、共通テストを使って、学校や生徒をランクづけする国が増えて、子どもがテストに追われるといった懸念もありOECDの教育事業自体にも転換点がきているという意見もあります。

しかし、シュライヒャー氏は、PISAの調査に重きをおくこと自体が問題であると考えています。

(シュライヒャー氏の引用)
「PISAが問う、いま必要な学力 シュライヒャー氏に聞く」26日・朝日新聞・{教育}欄 | 知的漫遊紀行 - 楽天ブログ

フィンランドでも新カリキュラムがはじまり、教育改革を進めた時に、PISAの学力が落ちるのではないかという懸念の声があがったそうです。
しかし、フィンランドの教育の対する考え方は前向きでした。

ハーバード大学教育学大学院で客員教授を務める教育学者、パシ・サルベリ氏は
「フィンランド的考え方では、PISAランキングの意義は取るに足りません。PISAは血圧測定のようなもので、時々自分たちの方向性を確かめるうえではよいですが、それが永遠の課題ではないのです」
「教育上の決定を行う際、PISAを念頭に置いてはいません。むしろ子どもや若者が将来、必要とする情報こそが大事な要素となります」

と答えています。

教育改革はすぐに結果は出ないものです。
社会はすぐに結果を求め、判断を迫りますが、教育への投資効果は時間が経たないと表れないことが多いです。
長い目でみて、子どもの成長には何が必要か考えるべきだと思いました。

(参考)
フィンランドの義務教育で新カリキュラムが開始「PISAを念頭に置いてない」 | マイナビニュース
PISA型学力ってなに? | 学研キッズネット for Parents

4 慶應通信とPISA

慶應通信に教育社会学という科目があります。
「学力とは何か」という問いがレポート課題のテーマになっていました。
簡単に言うと、学力は本来子どもの成長のために使われるものだが、学力それ自体が価値のあるものになって競って獲得されるようになった。
その学力によって経済的な格差が生まれ、親世代の格差が、子どもの学力格差を生むという悪循環が生じている。
それを乗り越えるためにはどうするかといった内容です。

学力とはなにか、どのように使うものか、本当に必要なものなのか、といったことを、フィンランドの教育を調べていて強く感じました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

(参考)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/eds/98/0/98_5/_pdf
フィンランドの学校がこう変わる!Q&A10選 - フィンランド大使館・東京 : 最新ニュース